恋人やパートナーとの関係の中で、「感情の起伏が激しい」「些細なことで怒ったり泣いたりする」「急に距離を取られる」――そんなことが続くと、「もしかして境界性パーソナリティ障害(BPD)なのかな?」と感じる方も少なくありません。
BPDは、感情や人間関係、自己イメージが不安定になりやすい心の特性で、本人も制御が難しく、周囲も戸惑いや疲れを感じやすい状態です。恋愛関係では特に、その影響が顕著に表れます。
しかし大切なのは、「BPDかどうか」を決めつけてしまうことではなく、特徴や背景を理解し、相手と自分の心を守る関わり方を見つけることです。
この記事では、彼氏・パートナーにBPDの可能性を感じたときに押さえておきたい主な特徴・接し方・関係を続けるためのポイントを、心理学的な視点も交えてやさしく解説します。
「何が正しい対応なのかわからない」「疲れてしまったけれど関係を続けたい」――そんな方のために、理解と実践のヒントをお届けします。
恋人・パートナーがBPDかもしれないと感じたら
まずは診断やレッテル貼りではなく、相手の行動や感情パターンを冷静に観察し、理解を深めることが大切です。
まず大切なのは、「彼はBPDだ」と即断するのではなく、相手の行動や感情のパターンを冷静に観察し、理解を深めることです。
恋愛関係の中で感情の波や距離感の変化が目立つと、「これは病気なのか?」「もしかしてBPD?」と考えてしまうのは自然なことです。
しかし、BPDの診断は専門家でも時間をかけて慎重に行うものであり、数回のやり取りや一時的な態度の変化だけで結論を出すことは非常に危険です。
BPDであってもなくても、「感情の揺れ」や「距離の取り方」には必ず理由があり、その理由を知ることが関係を守る第一歩になります。
BPDは専門家でも診断に時間をかけるほど複雑で、誤解による関係悪化を防ぐためにも慎重な見極めが必要だからです。
BPD(境界性パーソナリティ障害)は、感情や人間関係、自己像が不安定になりやすい心の特性です。
その背景には、幼少期の愛着形成の問題やトラウマ経験、生まれつきの感受性の強さや脳機能の違いなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。
診断は一度の面談で決まるものではなく、時間をかけて生活歴や感情のパターンを丁寧に把握していきます。
このため、恋人という立場から見える一面だけで「BPDだ」と決めつけてしまうと、誤解や偏見から関係を悪化させるリスクがあります。
たとえば、恋愛初期に見られる情熱的な愛情表現や、喧嘩後の距離の置き方は、BPDでなくても起こり得る行動です。
その一方で、BPDの特徴に似た行動(急な態度の変化や極端な不安)も存在するため、慎重に見極める必要があります。
例えば、急に優しさから拒絶に変わる、見捨てられることを極端に恐れるなど
恋愛関係で「BPDかもしれない」と感じやすい場面には、いくつかのパターンがあります。
1. 急に優しさから拒絶に変わる
昨日まで愛情深く接してくれていたのに、今日は急によそよそしく、会話も避けるようになった――。
このような急な変化は、BPDの特徴である「理想化」と「拒絶」の切り替わりに似ています。
ただし、これは一時的な感情の高ぶりや、仕事・体調の影響によっても起こり得るため、必ずしもBPD特有のものとは限りません。
2. 見捨てられることを極端に恐れる
少し返信が遅れただけで「もう嫌いになった?」「私のこと捨てるの?」といった不安を繰り返し口にする場合、強い見捨てられ不安を抱えている可能性があります。
BPDでは、この不安が感情的な反応や衝動的な行動(長文メッセージや突然の別れ話)に結びつきやすくなります。
3. 感情の起伏が激しく、その波に巻き込まれる
デート中に楽しそうに笑っていたかと思えば、急に怒りや涙があふれ出す。
この感情の切り替えの速さは、BPDの人が感情を調整することの難しさを示しているかもしれません。
4. 自己イメージが不安定
「私は何の価値もない」と落ち込む日もあれば、「私ほど愛情深い人はいない」と自信に満ちている日もある。
このような自己評価の極端な上下は、BPDの特徴のひとつです。
「理解」から始めることで、関係を守るための選択肢が広がります。
これらの行動がすべてBPDを意味するわけではありません。
恋人やパートナーが見せる感情や行動のパターンがBPDに似ていると感じたときは、診断やレッテル貼りを急がず、「理解」から始めることが大切です。
理解とは、相手の行動の裏にある感情や背景を想像し、どうすれば互いに負担を減らせるかを考えることです。
相手の行動があなたにとってつらいものであれば、それを我慢し続ける必要はありません。
同時に、相手の背景や特性を知ることで、より建設的な関係の築き方や、自分自身を守る方法が見えてくることもあります。
補足:理解から始めるためのステップ
- 観察する
感情の変化がどのような場面で起こるのか、パターンを知る。 - 記録する
関係の中で困ったことや嬉しかったことをメモしておく。 - 距離感を意識する
相手の感情に巻き込まれすぎないよう、自分の生活リズムを守る。 - 専門家の情報を参照する
信頼できる公的サイトや心理学の資料で、正しい知識を得る。
このように「彼氏・パートナーがBPDかも?」と感じたときは、診断ではなく理解と観察から始めることが、関係を守り、自分の心を守る第一歩です。
理解の上で境界線を持ち、必要なら専門家や第三者のサポートを得ながら、無理のない関係性を築いていきましょう。

「もしかして…」と感じたとき、答えを急ぐ必要はありません。大切なのは、相手を理解しながら、あなた自身の心と生活も守ること。距離を取ることも、そばにいることも、どちらも“愛”の形です。自分を責めず、安心できる選択をしてください。
BPDに見られる主な特徴(恋愛関係での例)
境界性パーソナリティ障害(BPD)を持つ人は、恋愛関係において特有の行動や感情のパターンを示すことがあります。
ここでは、特に恋人やパートナーとの関係で顕著になりやすい4つの特徴を紹介します。
ただし、これらはあくまで傾向であり、「当てはまる=BPDである」というわけではありません。誤解を避けつつ理解を深めることが大切です。
感情の起伏が非常に激しい
BPDの大きな特徴のひとつが、感情の波の大きさとその変化の速さです。
嬉しい、悲しい、怒り、安心…といった感情が短時間で切り替わることがあり、その瞬間ごとの感情が非常に強く感じられます。
恋愛で起こりやすい例
- デート中は笑顔で楽しそうに過ごしていたのに、帰り道で急に無言になり、怒りや涙を見せる。
- 朝は「大好き」と言っていたのに、夜には「もう疲れた、別れたい」と言い出す。
- プレゼントをもらって喜んでいた数時間後に「本当は心がこもってないでしょ?」と不安を口にする。
このような変化は、本人の中で感情を安定させる機能がうまく働かず、外部の出来事や相手の反応に強く影響を受けてしまうことが背景にあります。
恋人としては、「何がきっかけでこうなったのかわからない」と戸惑いや疲れを感じやすくなります。
見捨てられ不安からくる過剰な接触や距離の取り方
BPDの人は、恋人から「見捨てられること」への強い恐怖を抱える傾向があります。
この恐怖は現実的な根拠がなくても感じられるため、ちょっとした態度や言葉の変化にも敏感に反応してしまいます。
恋愛で起こりやすい例
- LINEの返信が少し遅れただけで「もう嫌いになった?」「浮気してるの?」と何度も確認する。
- 逆に、不安を感じると急に連絡を絶ち、試すように距離を置く。
- 予定が合わずに会えない日が続くと、「もう必要とされてない」と感じ、別れ話を切り出す。
見捨てられ不安は、恋人との絆を深めたいという気持ちの裏返しでもありますが、その表れ方が極端になりやすく、相手を困惑させたり、関係を不安定にする要因となります。
理想化と拒絶を繰り返す
BPDの恋愛では、「理想化」と「拒絶」が交互に現れることがあります。
理想化の段階では、相手を完璧な存在として見なし、過剰なほどの愛情を注ぎます。
しかし、何らかのきっかけで期待が満たされなかったと感じると、今度は相手を拒絶し、批判や攻撃的な態度を取ることもあります。
恋愛で起こりやすい例
- 出会って間もない時期に「運命の人」と呼び、未来の話を具体的にする。
- 小さな約束を守れなかったときに「もう信じられない」「あなたは変わった」と激しく責める。
- 一度拒絶モードに入ると、しばらくは会話や接触を避ける。
このような極端な感情の振れ幅は、相手への愛情が本物でないということではなく、安心感を得ることの難しさや、感情のコントロールの難しさが影響しています。
自己イメージが不安定で依存や孤立を行き来する
BPDの人は、自分が何者であるか、自分の価値がどこにあるのかという自己イメージが不安定になりやすい傾向があります。
恋愛関係では、この不安定さが「依存」と「孤立」の行き来として表れます。
恋愛で起こりやすい例
- 恋人の存在が生活の中心になり、予定や感情がすべて相手次第になる。
- 一方で、自分が傷つきそうだと感じると、突然距離を取り、連絡を断つ。
- 自分の中で「こんな自分はダメだ」という自己否定が強くなり、恋人からの愛情を信じられなくなる。
依存状態では相手への愛情表現が過剰になりやすく、孤立状態では突き放すような態度になるため、恋人は「どの距離感が正しいのかわからない」と混乱しやすくなります。
特徴を知ることが理解の第一歩
ここで紹介した特徴は、BPDに見られやすい傾向ではありますが、あくまで一部のパターンにすぎません。
恋人がこれらの行動を取ったからといって必ずしもBPDであるとは限らず、ストレスや環境の変化、一時的な心理状態によっても似た反応が起こります。
重要なのは、「特徴を知ることで相手を診断する」のではなく、「特徴を知ることで相手の背景を理解し、自分の心も守る方法を考える」ことです。
感情の起伏や距離の変化に振り回されすぎないよう、適切な境界線を持ちながら、必要に応じて専門家の助言を得ることが、関係を長く健全に保つカギになります。

BPDの特徴を知ることは、相手をラベルで決めつけるためではありません。感情や行動の背景を理解すれば、衝突や誤解を減らしやすくなります。大切なのは「どう向き合うか」。知識は、あなたと相手の心を守るための武器になります。
BPDの背景と原因を知る
境界性パーソナリティ障害(BPD)は、単なる「性格の問題」ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って形成される心の状態です。
その背景には、幼少期の育ち方や環境、過去のトラウマ、そして脳や遺伝といった生物学的な要素が関わっていると考えられています。
ここでは、BPDの成り立ちに関わる主な3つの要因を見ていきましょう。
幼少期の愛着形成の問題
BPDの背景として最もよく挙げられるのが、幼少期の愛着(アタッチメント)形成の不安定さです。
人は生まれてすぐから、養育者(多くは母親や父親)とのやりとりを通じて「安心感の基礎」を学びます。
この安心感は、成長後の人間関係や感情の安定に大きな影響を与えます。
しかし、幼少期に以下のような状況があると、愛着形成が不安定になりやすくなります。
- 養育者が頻繁に不在だった、または関心を向けてくれなかった
- 怒鳴られる、無視されるなど、情緒的に安全ではない環境
- 愛情表現が一貫しておらず、ある日は優しく、ある日は冷たい対応
このような環境では、「愛されることがいつ途切れるかわからない」という不安感が心に刻まれます。
その結果、大人になっても恋愛や人間関係において「見捨てられたくない」という思いが強くなり、BPD特有の行動や感情パターンが表れやすくなります。
トラウマ経験や環境要因
BPDの発症リスクを高めるもう一つの大きな要因が、トラウマ体験やストレスの多い環境です。
特に、心の発達が進む思春期までに強いストレスを受けると、感情のコントロール機能が影響を受けることがあります。
よく見られる背景には、次のような例があります。
- 幼少期や思春期に経験した虐待(身体的・性的・心理的)
- いじめや差別、孤立といった社会的ストレス
- 突然の家族の死や離婚、生活環境の急激な変化
- 家族内の不和や暴力、依存症問題
これらの経験は、「人は信じられない」「いつか必ず裏切られる」といった認知のクセを作ることがあります。
そのため、大人になってからの恋愛関係でも、相手を信じることが難しく、些細な出来事に過剰反応してしまうことがあります。
脳機能や遺伝的要因
心理社会的な要因だけでなく、生物学的な要因もBPDの背景として注目されています。
近年の研究では、BPDの人は脳の特定の部位(扁桃体、前頭前野など)の働き方に違いがあることが報告されています。
- 扁桃体(へんとうたい):恐怖や怒りといった感情反応を司る部分が過敏になっている
- 前頭前野:感情を抑制したり、冷静に判断する機能が弱まりやすい
- 海馬:記憶やストレス反応の調整に関わる部分が萎縮していることがある
また、双子や家族を対象にした研究では、BPDの発症に遺伝的な要素が一定の割合で関わっていることも示されています。
遺伝が直接BPDを決めるわけではありませんが、「感情が揺れやすい性質」や「ストレスに敏感な性格傾向」が遺伝的に受け継がれる可能性はあります。
複数の要因が絡み合って現れる
ここまで述べたように、BPDは「生まれ持った性質」×「育った環境」×「経験」が複雑に絡み合って形成されます。
そのため、原因を一つに特定することは難しく、「この出来事があったからBPDになった」と断言することはできません。
例えば、もともと感情が揺れやすい性質を持つ人が、幼少期に安定した愛着を得られず、さらに思春期にいじめや虐待などのトラウマを経験した場合、BPDの傾向が強くなる可能性があります。
逆に、生物学的な脆弱性があっても、温かく安定した環境で育てば、BPDとしては表れないケースもあります。
原因を知ることは“責める”ためではない
BPDの背景や原因を知ることは、相手や自分を責めるためではありません。
むしろ、「どうしてこういう反応をしてしまうのか」という理解を深めることで、無駄な衝突や誤解を減らすことができます。
原因が複雑であるからこそ、BPDは「意志が弱いから」「性格が悪いから」ではなく、心の仕組みの問題として捉えることが大切です。
そして、この理解こそが、回復や関係改善のための第一歩になります。

BPDの背景や原因は、本人や周囲の誰かを責めるためのものではありません。「なぜこうなったのか」を知ることは、理解を深め、関わり方を優しく変えるきっかけになります。知識は、関係を守るための大切なサポートになります。
恋人・パートナーとの関係を守る接し方
境界性パーソナリティ障害(BPD)の特徴は、感情の起伏や人間関係の不安定さにあります。
恋人・パートナーがBPD傾向にある場合、日々のやり取りの中で「どう対応すればいいのかわからない」と感じることも多いでしょう。
ここでは、関係を守るために押さえておきたい4つのポイントを解説します。
境界線を守りつつ安心感を与える
BPDの人は「見捨てられること」への強い不安を抱えています。
そのため、距離を置かれると極端に不安になったり、逆にべったりと依存する行動を取ったりします。
しかし、常に相手の感情に巻き込まれてしまうと、自分自身が疲弊してしまいます。
大切なのは、「近すぎず、遠すぎず」の距離感を保つことです。
例えば以下のような対応が有効です。
- LINEの返信は無理のないペースで行う(即レスの義務感を持たない)
- 会う頻度や時間をお互いに話し合って決める
- 「今日は一人で過ごしたい」と正直に伝える
境界線を守ることは、決して冷たい態度ではありません。
むしろ、安定した関係を続けるための「土台づくり」として必要不可欠です。
加えて、「連絡が遅れても気持ちは変わらないよ」など、安心できる言葉を添えることで、相手の不安を和らげられます。
感情を否定せず受け止める
BPDの人は、自分の感情が否定されることに強く傷つきます。
たとえ些細な指摘や冗談でも、「理解されない」「見捨てられた」と感じやすくなるためです。
そのため、相手が強い感情を表しているときは、まず受け止める姿勢を示すことが大切です。
- NG例:「そんなこと気にしすぎだよ」「考えすぎじゃない?」
- OK例:「そう感じたんだね」「それはつらかったよね」
これは同意するという意味ではなく、「あなたの感情を理解しようとしています」というメッセージです。
一度感情を受け止めた上で、「じゃあどうしていこうか」と次のステップに進むと、相手も話しやすくなります。
自分の生活や心も守る
BPDの人と関わるとき、多くの人が陥るのが自己犠牲モードです。
相手を支えたい気持ちから、仕事や友人関係、自分の趣味や休息を削ってしまうケースは少なくありません。
しかし、これは長期的には逆効果です。
あなたが疲弊してしまえば、相手を支えることも続けられなくなります。
自分を守るためにできることは以下の通りです。
- 自分の予定や時間を優先する日を作る
- 友人や家族とのつながりを保つ
- 感情的に辛い日は距離を置く
BPDの人との関係は、「どちらか一方が我慢して成立する関係」ではなく、「お互いに無理なく続けられる関係」でなければ長続きしません。
自分の幸せを犠牲にしない勇気も、関係を守るためには必要です。
専門家のサポートを促す
BPDは、適切な治療やサポートによって改善が期待できる心の状態です。
特に効果的とされるのが、カウンセリングやDBT(弁証法的行動療法)などの心理療法です。
ただし、本人が治療の必要性を感じていない場合や、拒否感が強い場合もあります。
その場合は、無理に勧めるよりも、「こういう方法もあるよ」と情報として伝える形が効果的です。
また、恋人や家族など支える立場の人も、専門家のサポートを受けることで、自分自身の心のケアや対応方法を学べます。
- 家族会や支援グループへの参加
- 心理士や精神科医への相談
- BPDに関する正しい知識の習得
関係を守るためには、「あなた一人で抱え込まない」ことが大切です。
支えることと距離を保つことは両立できる
BPDのパートナーとの関係は、感情の波に翻弄されやすく、時には疲れることもあります。
しかし、境界線を守りつつ安心感を与え、感情を受け止め、自分の生活も大切にすることで、関係はより安定します。
さらに、専門家のサポートをうまく活用することで、お互いが少しずつ安心して付き合える環境を作ることができます。
「支えること」と「距離を保つこと」は矛盾しません。
むしろ、このバランスこそが、長く続く信頼関係を育むカギです。

支えることと自分を守ることは、決して相反するものではありません。境界線を持ちながら安心感を与えることは、長く続けられる関係を築くための土台になります。無理をしない関わり方こそ、あなたと相手の心を守る愛の形です。
関係を続けるか迷ったときの判断軸
境界性パーソナリティ障害(BPD)の傾向を持つ彼氏・パートナーとの関係は、喜びや深い絆を感じられる一方で、感情の波や人間関係の不安定さによって心身が疲弊することもあります。
「もう限界かも…」と思う日もあれば、「やっぱり支えたい」と感じる日もある――そんな揺れる気持ちは自然なことです。
大切なのは、勢いや罪悪感ではなく、冷静な判断材料に基づいて今後を決めることです。
ここでは、判断を助ける3つの軸を紹介します。
関係が自分の心身にどのような影響を与えているか
まず、最も大事なのはあなたの心と体の健康です。
BPDの人との関係では、相手の感情の変化に合わせて自分の生活リズムや気分も大きく揺れやすくなります。
- 眠れない日が続く
- 常に相手の機嫌をうかがってしまう
- 仕事や友人関係に支障が出ている
こういった状態が長く続く場合、心身への負担は想像以上に大きくなっています。
自分に問いかけてみてください。
「この関係は、私を消耗させているか、それとも成長させているか?」
感情的な瞬間だけでなく、日常全体のバランスを見て判断することが重要です。
もし疲弊感の方が大きく、回復する時間も取れない状態なら、一度距離を置くことも選択肢のひとつです。
支えられる環境やサポートがあるか
BPDのパートナーを支えるのは、ひとりで抱え込むには負担が大きすぎます。
相手を支えつつ自分も守るためには、外部のサポート体制が不可欠です。
例えば以下のようなサポートがあります。
- 家族や信頼できる友人に相談できる環境
- カウンセリングや心理療法へのアクセス
- BPDに関する情報や書籍などの知識源
- 同じ立場の人とつながれるコミュニティ(家族会・支援団体など)
支える側も、人に話す・吐き出す・助けを求める機会がなければ、どこかで心が折れてしまいます。
逆に、支え合える環境が整っていれば、負担を分散しながら関係を続けやすくなります。
もし今「誰にも話せない」「一人で抱え込んでいる」と感じているなら、それはサポート不足のサインです。
環境を整えることが、あなたの判断にも大きく影響します。
相手に変化や改善の意欲があるか
BPDは、適切なサポートや治療によって改善が期待できる心の状態です。
しかし、その第一歩は本人が「変わりたい」と思えるかどうかにかかっています。
例えば、
- 自分の感情の変化に気づき、言葉で伝えようと努力している
- カウンセリングや医療機関に興味を示す
- 怒りや衝動のコントロール方法を学ぼうとする
こういった行動が見られるなら、関係改善の可能性は十分あります。
反対に、何度伝えても暴言や暴力が続く、治療や話し合いを完全に拒否する場合は、関係を続けるリスクが高くなります。
判断するときの心構え
BPDのパートナーとの関係を続けるかどうかは、正解がひとつではない問題です。
相手を見捨てることに罪悪感を抱く人も多いですが、あなたの心と体を守ることは、決してわがままではありません。
判断に迷うときは、次の質問を自分に投げかけてみてください。
- この関係は私に安心感を与えているか?
- 自分らしい生活を送れているか?
- 外部のサポートがあり、持続的に支えられる環境か?
- 相手は変化や改善の努力をしているか?
この4つのうち、半分以上が「NO」なら、一度距離を置いて状況を整理することを検討してもいいでしょう。
「続ける・離れる」は自分の選択でいい
BPDのパートナーを支えることは、愛情や忍耐だけでは乗り越えられない場面もあります。
だからこそ、自分の心身の健康・サポート体制・相手の改善意欲という3つの軸で判断することが大切です。
最終的に「関係を続ける」と決めても、「離れる」と決めても、それはあなたの人生にとって必要な選択です。
その選択は、誰かに許可をもらう必要はありません。

あなたが心から安心して生きられる道を選ぶことが、結果的に相手にとっても最善になる場合があります。
まとめ|理解と境界線が、愛を守るカギ
境界性パーソナリティ障害(BPD)の特徴を持つパートナーと関係を築くことは、深い愛情や絆を感じられる瞬間がある一方で、同時に強い疲弊感や迷いを抱えることもあります。
感情の揺れ、突然の拒絶、予測できない言動――そうした出来事に振り回されながらも、「それでも支えたい」「見捨てたくない」という想いは、多くの人に共通しています。
しかし、この関係を長く続けるためには、「理解」と「境界線」という2つの柱が欠かせません。
この2つが揃うことで、あなたもパートナーも、互いにより健やかな形で関わり続けられる可能性が高まります。
相手を理解することが関係の土台になる
BPDは、性格の問題やわがままではなく、感情や人間関係の調整が難しくなる心の状態です。
本人にとっても、自分の感情や行動をコントロールできないことは苦痛であり、後悔や罪悪感に苛まれることも少なくありません。
その背景には、幼少期の愛着の問題やトラウマ経験、脳の機能差、遺伝的な要因など、さまざまな事情が複雑に絡み合っています。
つまり、相手の行動の裏には必ず理由があるという視点を持つことが、誤解や衝突を減らす第一歩になります。
理解するというのは、相手の行動をすべて許すことではなく、
「なぜこの反応が出たのか」という仕組みを知ることです。
そうすることで、無闇に傷ついたり、過剰に責任を背負い込んだりするリスクを減らせます。
境界線を引くことは冷たさではなく、優しさの一部
BPDのパートナーとの関係では、相手の感情に巻き込まれてしまいやすく、自分の生活や感情の優先順位が後回しになりがちです。
しかし、相手を支えようとするあまり、自分が消耗してしまえば、関係自体が立ち行かなくなります。
ここで必要になるのが、境界線(バウンダリー)です。
境界線とは、
- どこまで関わるか
- 何を受け入れ、何を拒否するか
- どんな時に距離を置くか
といった、あなたの心と生活を守るためのルールです。
境界線を引くことは、相手を突き放す行為ではありません。
むしろ「ここまでは関われる」というラインを明確にすることで、長期的に関係を続けやすくなります。
例えば、
- 暴言や暴力が出たら、その場を離れる
- 自分の予定や睡眠は守る
- 感情のすべてを受け止めるのではなく、必要に応じて第三者(カウンセラーなど)に橋渡しする
こうしたルールを事前に決めておくことが、あなた自身を守ることにつながります。
無理のない範囲で続けられる関係性を
「愛しているから」「見捨てられたくないから」と、自分の限界を超えて関係を続けることは、短期的には成り立っても、長期的にはあなたをすり減らします。
BPDの特性を持つパートナーとの関係を続けるためには、持続可能性が重要です。
そのために必要なのは、
- あなた自身が心身ともに健康でいられること
- サポートしてくれる人や仕組みがあること
- 相手にも少しずつ改善の意欲があること
これらが揃っていれば、関係は安定しやすくなります。
逆に、すべてを一人で背負い、サポートもなく、相手にも改善の姿勢がない場合、関係を長く続けるのは難しくなります。
自分の選択を肯定する勇気を持つ
関係を続けるか、距離を置くか――この選択には、正解も不正解もありません。
他人からの評価や「見捨てた」といった言葉に影響される必要はありません。
大切なのは、あなたが安心して生きられる道を選ぶことです。
たとえ離れる選択をしても、それは相手を見放すことではなく、お互いがより良い人生を歩むための決断です。
愛と境界線は両立する
「相手を理解すること」と「自分を守る境界線を引くこと」。
この2つは矛盾しているように見えて、実はどちらも関係を守るために不可欠な要素です。
理解だけでは自分が壊れてしまい、境界線だけでは距離ができすぎて関係が途切れてしまう。
そのバランスを見つけることこそ、BPDのパートナーとの関係を長く続けるカギになります。

あなたの安全と幸せは、守られるべき最優先事項です。
そのうえで、相手を理解し、境界線を引くことができれば、愛は壊れずに続いていく可能性があります。